二人の花嫁の卓越したセンスが光る、ミロス島でのビーチウエディング。90年代のミニマリズムにインスパイアされて

交際10年という節目を機に、結婚を決めたモデルのテレサ・ディルガーと不動産ブローカーのイェシム・アク。エーゲ海に浮かぶギリシャのミロス島を舞台に、90年代のミニマリズムにインスパイアされたスタイリッシュな式を友人たちと作り上げた。

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ドイツ人モデルの テレサ・ディルガー と不動産ブローカーの イェシム・アク が出会ったのは2014年、世界中が ワールドカップ で盛り上がっていた初夏のある日のことだった。 ニューヨーク のノリータ地区にあるレストラン、 リンティンティン の外で友人たちと座っていたイェシムの前をテレサが通りがかった。「テレサが私を指差して、どの国を応援しているのかと聞いてきたんです。私はアルゼンチンだと答えました」とイェシムは回想する。「彼女の頬にドイツの国旗が描かれていたのには気づかなくって。でも彼女はとにかくドイツビールをおごると言ってきたんですよ。この出会いがきっかけで、付き合うことになりました」 交際10年の節目に決めた結婚。ファッション業界で培った経験がプラニングのキーに テレサ(左)とイェシム(右)。 交際をスタートさせてから10年という節目を前にした2023年11月、二人は大好きなギリシャのミ ロス 島で パーティー を開いたら楽しいだろうと思い立った。そんなとき、テレサはもうひとつ別のアイデアをひらめいた。「テレサが私に向かって『結婚しよう!』と言ったんです」とイェシムは言う。二人は即座に行動に移し、結婚式と東南 アジア へのプレ ハネムーン の構想をたった1週間でまとめ上げた。「コンセプトはすぐに決まりましたね」とイェシム。「私は過去にトム・フォード期の グッチ ( GUCCI )や サンローラン ( SAINT LAURENT )の ファッションショー をプロデュースしたことがあるので、プラニングをするのは簡単でした。テレサもモデルとして世界中を飛び回っていましたし、 旅行 の計画をするのは得意だったから、私たちは最高のデュオでしたね」 二人は友人たち全員にFaceTimeをし、夏にギリシャでのお祝いに来てくれるよう呼びかけた。結婚式当日までの準備は、アテネを拠点とするイベントプラナーの Think Happy Events がサポートした。「(創設者の)クリソラと彼女のチームは素晴らしい仕事をしてくれました。私たちにプランをまとめたスプレッドシートを共有してくれて、必要に応じて電話で確認をしてくれました」 インスピレーション源は90年代のミニマリズム 友人たちとプラカに到着。イェシムは カイト(KHAITE )のルック、テレサは アライア(ALAÏA )のドレスに マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK )のサンダルをスタイリング。 ファッション業界出身の二人だけに、 ドレス コードは結婚式の重要な役割を果たしたという。「Utopia Cafe でのウェルカムパーティーでは、友人全員に花嫁気分を味わってもらいたかったので、白のロングドレスかリネン ジャケット を着てもらいました」とイェシム。その翌日はカタマランボートを手配し、ゲストたちとミロス島を巡る クルーズ へ。この日のドレスコードは黒一色だったため、花嫁たちは目立つようにとお揃いでエレス(ERES)による白のスイム スーツ を纏った。一方、メインセレモニーのテーマとなったのは、 クリスティ・ターリントン とマーク・ヴァンダールーが出演した90年代のカルバン クライン( CALVIN KLEIN )「エタニティ」の広告。「ゲストにはスリップドレスかボタンダウン シャツ を着るようお願いしました。 セクシー な気分で踊り明かしてほしかったから」とイェシムは説明する。 テレサのドレスは リファット・オズベック がアーティストのエリオット・パケットとヒューゴ・ギネスのためにデザインしたもの(左)。イェシムは ファクトリー・ニューヨーク によるカスタムドレスを纏った(右)。 イェシムはアライア、テレサはザ・ロウのサンダルをセレクト。 90年代風のミニマルな演出のアイデアは、友人で雑誌『 UNEMPLOYED 』をプロデュースする セシル・ウィンクレール との会話から生まれたという。彼女はイェシムにプリンスのように髪をオールバックにして黒を着るべきだと言い、テレサにはビスチェトップを絶対に着るべきだとアドバイスしたそうだ。「その後、ご近所さんのベラ・ギネスと ワイン を飲む機会があったのですが、そのとき彼女に胸を隠せる一着を探していると話したところ、クローゼットから『こんなのはどう?』とドレスを見せてくれて。(あまりにもすてきすぎて)びっくりしました」。そのドレスは、90年代に彼女の両親(アーティストのエリオット・パケットとヒューゴ・ギネス)の結婚式のために、 リファット・オズベック(RIFAT OZBEK) が特別に デザイン したものだった。「デザイナーと同じく私もトルコの血を引いているので、このドレスにすぐに繋がりを感じました。試しに着てみたら完璧にフィットしたので、その場でこの一着に決まりました」 招待状や席札のイラストとデザインは、 アンナ・マリア・モーフォニユー に依頼。ダイヤモンドの結婚指輪は グラフと ブチェラッティ のもの。テレサは カルティエ のダイヤモンドピアスと、パリの Dary's Bijouterie で見つけたヴィンテージダイヤモンドネックレスを身につけた。 一方のテレサは、親友の アイリーン・フェイニー と1日かけて ウエディングドレス を見てまわったが、試着したどれもしっくりこなかった。そこで彼女は、友人のポール・バーゴが自身のブランド、 ファクトリー・ニューヨーク(FACTORY NEW YORK) でビスチェをデザインしていることを思い出し、ツーピースをオーダーメイドするためフィッティングの予約を入れた。「ポールは美しい セットアップ を仕立ててくれて、テレサがイメージする以上のものを叶えてくれました」とイェシムは絶賛する。 指輪は一緒に買うと決めた二人は、ある日の午後、ドレスアップしてマディソン・アベニューへ。まず最初に立ち寄ったのは、 ブチェラッティ ( BUCCELLATI )。オンラインで一目惚れした「 Fedi Eternelle 」 リング がテレサにぴったりと合い、即決したそうだ。続いて向かったのは グラフ ( GRAFF )。「 ローレンスグラフ シグネチャー 」が大好きだというイェシムのために、テレサはホワイトゴールドとダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドの2つのリングを購入した。 挙式当日、花嫁たちの準備を手伝ったのはモデルの友人たち。「式の場所に向かうまで1時間ほどしか時間がなかったので、 パリ コレのバックステージのようだと冗談を言っていました」とイェシムは振り返る。「ヘアは メロディ・モンローズ と グレース・マハリー 、スタイリングは アイリーン・フェイニー 、メイクは リリー・ドナルドソン が担当してくれました」。準備の途中、お祝いムードで盛り上がった彼女たちは、ルイナールの シャンパン を開けたそうだ。「 ブーケ が届いたとき、シャンパンが入っていたボトルクーラーに入れたんですよ!」とイェシムは笑う。 神秘的な美しさを放つサラキニコビーチで再現した、絵画のような瞬間 挙式が行われたのは、花嫁たちがその 「神秘的なクオリティと自然な美しさ」を理由に選んだサラキニコ ビーチ 。二人がビーチへアプローチする際は、友人に紹介してもらったオペラ歌手の ミレイユ・ルベル と レイチェル・フェンロン がドリーブの『ラクメ』より「花の二重唱」をアカペラで歌った。二人の歌手たちもまた、スリップドレスを着用し、 ヘアメイク はボッティチェリの名画『ヴィーナスの誕生』を参考にしてもらったそうだ。 サラキニコビーチはパブリックビーチであるため、プランナーは式を挙げるための特別な許可を得なければならなかった。また、椅子などを持ち込むことも禁止されていたため、クリエイティブな対処が求められたそうだ。「こういった制約が、 ダンス パーティーにするアイデアへと発展させるのに役立ちました。MoMAにあるマティスの絵画にヒントを得て、友人でフィルムメーカーのジュリア・ヤンシュに キス の直後のダンスをリードしてもらうことにしました」とイェシム。「私は何人かに立つ場所を指定し、手をつないで決まった方向に動くようにと指示を出しました。リハーサルは何もしなかったのに、どういうわけかすべてがうまくいったんです。ゲストたちは自然に大きな輪になり、私たちはその輪のなかに入って踊りました。するとその輪が私たちに迫ってきて、みんなで腕を上げて飛んだり跳ねたりしたんです。最高でした!」 オペラ歌手のミレイユ・ルベルがプーランクの「愛の小径(こみち)」を歌うなか、ケーキカットをする花嫁たち。ウエディングケーキは Raptis Pastry & Cakes によるもの。 その後、ゲストたちは二人が選曲したプレイリストが流れる車で島の反対側へ。その間、花嫁たちはフォトグラファーの レ・アナグー とポートレート撮影を行った。レセプションでは、オペラ歌手のミレイユ・ルベルがプーランクの「愛の小径(こみち)」を歌うなかケーキカットを行い、 ディナー には二人の友人によるロースト 料理 が振る舞われた。ディナーは後にパーティーへと変わり、ゲストたちはDJフェデ・サエンスによるディスコミュージックと シルヴィア・プラダ がミックスする90年代のハウスミュージックで明け方まで盛り上がった。 翌朝はビーチでゆっくりとした時間を過ごし、ゲストの何人かは隣のフォーレガンドロス島でのバディムーンへ。「5日間をともに過ごしたあと、友人たちはそれぞれ次の目的地へと旅立ちました。テレサと私だけのハネムーンはコウフォニシア島で。私たちはまだ、幸せで胸が張り裂けそうなほどの愛を感じています。私たちの友情と、世界中のさまざまな場所からお祝いに駆けつけてくれた人たちに感謝の気持ちでいっぱいです」 Text: Shelby Wax Adaptation: Motoko Fujita From VOGUE.COM READ MORE 2025年秋冬ニューヨーク・ブライダル・ファッションウィーク発、最新ウエディングドレストレンド7 グラフがブライダルキャンペーンを公開。パリで始まる極上のラブストーリーを描く 44歳マリアカルラ・ボスコーノが結婚! ドルチェ&ガッバーナ アルタ モーダによるカスタムウエディングドレスを纏って 17人に聞いた「子を持つ・持たない」と決めたタイミング──20代から40代がシェアする、それぞれのリアルな答え 【連載】私たちのパートナーシップ Vogueエディターおすすめ記事が届く── ニュースレターに登録.